授業が始まっても、私はこれまでの情報を頭の中で整理していた。少しずつ真相に近付いている気はするのに・・・
「──であるから、日本はドイツ・イタリアと三国同盟を結んだ訳だ。
ドイツの指導者はあの有名なヒトラーだが、彼が好んで聞いた作曲家は誰だか知ってるか?
どうだ里川?
おい、里川!!」
「は、はい!!」
授業をほとんど聞いていなかった私は、質問の内容すら分からなかった。
「えっと・・・」
先生は首を左右に振ると、ヤレヤレといった表情で次の人を指名した。
「里川はもう良いから座れ。
岸本、お前なら分かるだろう」
ふう、助かった。
「質問を教えて下さい」なんて、さすがに言えない。というか、質問を聞いても分からないんだけどさ。
「はい、ワーグナーです」
「岸本、ワーグナーについて少し説明してくれるか?」
「ワーグナーは、歌劇を始め多くの有名な曲を残した人物です。代表作には、タンホイザーやローエングリンなどがあります。ローエングリンはチャップリン映画の独裁者のテーマ曲として有名です。
それと――・・・」
「あ、いや岸本、もうそれくらいで良いぞ」
岸本、あんた何者?



