「ねえ千里、何か変な所で停まったね」

「え、あ、うん・・・」


スムーズに運行していた電車が、突然の急ブレーキで停止した。毎日通学に利用しているが、こんな事態は今までに経験がない。

下車する三春駅までは、まだかなり距離がある。


何の為に停車したのかアナウンスはないし、一向に動き出す気配もない・・・

「ねえ愛美、事故でもあったのかなあ?」

「さあ・・・
でもまあ、私達は動き出すまで待つしかないよ。少々遅くなっても、遅刻扱いにはならないだろうしね」


停車した直後は、しきりに窓から外に身を乗り出して状況を確認しようとしていた人達がいたが、徐々に車内も落ち着つきを取り戻してきた。結局のところ、動かなければどうする事も出来ないのだ。

妙に静まり返った車内を見渡すと、注意事項など無視して大半の人達がスマートフォンの画面に見入っている。


「ほら千里っ!!
このケータイ小説が面白いんだよ、ホラホラ見て見て!!」

「文字が小さくて見えないよ・・・」

隣りで親友の愛美も、ケータイ小説を読みながら時間を潰している。私はケータイ小説なんかに興味は無いし、仕方がなく窓の外を眺めていた。