「ねえ里川さん・・・ あの、シューベルトの弦楽四重奏曲第14番っていう曲に別名がある事を知ってる? あの曲は、別名【死と乙女】って呼ばれている歌曲なんだよ。 病床に伏せる乙女を、死神が迎えに来るんだ。 必死で抵抗する乙女に、死神はこう言う。 『私はお前を苦しめる為に来たのではない。安息を与える為に来たのだ』 本当に安息ならば・・・ 妹の死は恐怖ではなく、安らかなものなのだと思ったんだ。 だから、あの踏切りで、死に逝く人の姿を見ていた。 見ていたんだ──」