安楽死


「妹はさっき逝ってしまった・・・

小さい頃から身体が弱くて、10歳まで生きられないって言われていた。だけど、今はもう15歳だ。

本当に、よく頑張ったよね」


岸本は金網の向こう側で、空を見上げながら話し続ける。

「両親は音楽家だから、いつも家にはいなくてさ・・・
妹の隣りには、いつも俺がいるしかなかった。

死と隣り合わせの妹と、ずっと一緒にいたんだ。

熱が出る度、腹痛を起こす度、いつもいつも妹の隣りには死があった。

その度に、怖くないよ、大丈夫だよって・・・
何の根拠もないのに、ずっとずっと言い続けてきたんだ。


だけど――
今回はもう、医者が絶対にダメだと」


私はただ、その場で岸本の話しを静かに聞いていた。