雨風に曝され、所々黒ずんだ白いコンクリートの屋上。高い金網に囲まれ、患者が誤って落下しない様になっている。
北風が吹き荒れるここは、建物の中とは別世界だ。
1歩、2歩・・・
扉から離れ、屋上を見渡すが人影などどこにもない。
私が屋上の真ん中まで進むと、どこからともなく声が聞こえてきた。
「里川さん、よくここまで辿り着いたね。
正直、驚いたよ」
私はその声に再び周囲を見渡したが、どこにも人影は見当たらない。
「ここだよ」
声のした方を見ると、金網の向こう側にある僅か50センチ程の足場に岸本が立っていた。
「岸本──!!」



