安楽死


私は壁際に進み、看護師が慌ただしく出入りする病室に近付く。そして、扉の前に立つと、出入りする時を狙って中を覗き込んだ。

病室の中には様々な種類の器械が設置され、医師と看護師が必死に蘇生措置をしていた。

病室に岸本の姿はない。


「岸本・・・」


いや――

状況はどうであれ、何も関係ない人を何人も殺したんだ。岸本の心境は分からないでもないが。それでも、この罪は許されない。


私はその場を離れ、岸本の姿を探す。

まず1階まで下りて自転車を確認したが、そのまま駐輪場に停めてあった。

まだ、この病院の中にいるハズだ。


私は1階から順番に、上の階へと追い詰めていく。