安楽死


老婆の話は更に続く──


「その時計の時報として流れる曲は、シューベルトの弦楽四重奏曲第14番・・・

入院されている咲子様が、そのメロディを大変に気に入られていて、旦那様が時報にする様に時計屋に依頼されたのです」

「そうなんですか」

老婆は喋り過ぎてしまったと後悔したのか、それから直ぐに頭を下げて家の中に戻って行った。


そうだったのか。
そんな思い出深い品物だったなんて・・・

岸本は覚悟を決めて、この事件を起こしたのだろう。何を失ったとしても──


いや、余計な事を考えるのは止めよう。
今は事件の犯人として、岸本を追い詰める事だけを考えよう。


私は岸本のいる病院へと向かう。
この事件を終わらせる為に――!!