言われた家に着くと、表札には確かに″岸本″と書かれていた。それにしても、一般庶民では考えられない住居だ。我が家の3倍はある。
表の門に回り呼び鈴を鳴らすと、直ぐに応答があった。
「どちら様ですか?」
かなり年配と思われる女性の声が、インターホンから聞こえてきた。
「クラスメートの里川と申しますが、岸本君にお会いしたいのですが」
「里川様ですか?
只今お坊ちゃまは、病院の方に行ってらっしゃいますが・・・」
お坊ちゃま?
もしかすると、この年配の女性は家政婦さんなのだろうか?明らかに、私とは生活レベルが違う。
その時――
古物屋で確認した後で適当に時間を進めた時計が、勝手に鳴り始めた。慌てて鞄から時計を取り出すと、アラームを止める。
「ああ、驚いた・・・」
鳴り止んだ時計を鞄に入れようとしていると、勝手口開き、中から白髪の老婆が白いエプロン姿で現れた。



