兄は一応、県内屈指と言われる大学の心理学部に在学中だ。心理学部の教授の中には、催眠について研究している人もいるらしい。
兄は私の方に向かって座ると、ジッと目を見て話しを始めた。
「あのケータイ小説の催眠効果は、″歩け″という指示だ」
「そ、それだけ?」
余りにも簡単な催眠効果に、私は思わず拍子抜けした。
「お前なあ・・・歩けって指示はどんな場所でも、どんな時でも実行しなければならないんだぞ?
例えそれが、目の前に線路があっても、だ」
「あ・・・!!」
そ、そうか。
単純な指示でも時と場所によっては、恐ろしい事が起こりえるんだ。
ホントにそうだとすれば、愛美が夢遊病の様に線路に入って行った事も説明出来る。
「まあ、まだ解析が済んでいない部分もあるが、今の分かっているのはそんな所だな。
もう良いだろ?俺はテレビを見るぞ!!」
兄は再び寝転んでテレビを見始めた。



