安楽死


田中は私の言葉を呆然と聞いていたが、フッと我に返ると真剣な表情で言った。

「な、何の話か全く分からないんだけど?」

田中のトボけた態度と、傷付いた愛美の姿が脳裏に浮かび、フツフツと怒りが込み上げてきた。


「あんたがAYUMIっていうハンドルネームで、あの【さよなら】っていう小説を書いたんでしょ!!

今日の出版社との書籍化についての話し合いは、誰があの小説を書いているのか調べる為に、私がコネでセッティングしたのよ!!」

「・・・は?」

田中は私が一体何を言っているのか、まだ理解出来ていない様だった。仕方なく、噛み砕いて告げる。


「だから――あの【さよなら】って小説を書いたのは、田中なんでしょ?」

私のイラ立ちは頂点に達していた。
覚悟を決めた私に、もはや怖い物などない。