余りダイレクトに聞くと身構えるかも知れないと考えた私は、その場を離れる格好をして、さりげなく罠にかける。
「あ、ヤバ!!
時間だから、そろそろ行かなくちゃ。
じゃあね、また教室でね」
「あ、ああ・・・」
何がなんたか分からず焦って返事をした田中に、私はごく自然に言った。
「田中君も、早く出版社の人来ると良いね」
「ああ、もう暫く待ってみるよ」
待ってみるよ――
「よし!!」
振り返って笑う私と目が合っても、田中は自分が何を口にしてしまったのか、全く気が付いていなかった。
私は少し距離を開け、人目に付く位置に立つと田中に告げる。
「ケータイ小説の【さよなら】を書いているのは、田中君でしょ?」
その言葉を聞いて、田中はようやく状況を理解する。田中の表情が見る間に険しくなった。しかし、もう遅い!!
「あんたが書いた小説で、一体何人死んでると思ってるの。絶対に許せない──!!」
私はわざと大声で、周囲の注目を集める様に言い放った。これだけ注目を浴びれば、妙な事は出来ない。



