安楽死


この声は――

私は恐る恐る、ゆっくりと振り返った。


特に理由は無かったのだが、ここまで後をつけて来た事に違いない。

その後ろめたさで一杯だった。


「あ、ああ岸本くん」

「何してるの?」

岸本の口調がさっきより強くなる。


「い、いや・・・
し、城川さんのお見舞いに来たんだけど、病室が分からなくて・・・」

私の曖昧な受け答えに怪訝な表情を浮かべたが、岸本は背を向けながら言った。

「この階にはいないよ」

そして病棟の奥へと、廊下を歩いて行った。


「ふう・・・」

岸本の不意打ちに動揺し、手の平にじっとりと汗をかいていた。

「もう、早くこの階から下りよう」


エレベーターのボタンを押した時、私達の様子を見ていた看護師が、ため息混じりに呟いた。

「もう・・・あんなに、いつもピリピリしなくてもいいのにね。

まあ、妹があれじゃあ仕方ないかも知れないけど・・・」


妹が・・・何?