翌朝――

教室に入り自分の席に着くと、高山が私に声を掛けてきた。

「おはよう」

今までにはない事だけに、私は動揺して返事が詰まった。

「お、おはよう」


高山は私にメモ用紙を差し出すと、周囲に聞こえない様に小さな声で言った。

「これは、父の友人が勤務している出版社の連絡先よ」

「出版社?」


あからさまに理解していない私に、高山は苦笑混じりにその理由を説明し始めた。

「昨日少し考えたんだけど・・・

犯人とあのケータイ小説には、絶対に関係があると思うの。だから、書籍化を検討しているっていう話を持ち掛けて呼び出すのよ。

そうすれば、作者が誰か分かるでしょ?
誰だって、自分の書いた作品が書籍にしたいと言われれば、嫌な気はしないと思うのよね」


確かに、高山の言う事はもっともだ。書籍化する意思が無いにしろ、連絡先などは分かるかも知れない。