安楽死


足を進めるに従い、看板が大きくなってくる。

コンビニの駐車場が見えてきた時、道路を挟んだ向かい側の建物が目に入った。

こ、これは――

「高山医院?」

私は左右を見て車が来ない事を確認すると、その位置から道路を渡った。


入口の看板をもう一度確認すると、確かに高山医院と書いてある。

もしかして・・・


病院の右側には、隣接する民家の3倍はある木造の豪邸が建っている。

おそらく、この建物が自宅だろう。


私はゆっくりと、その豪邸の門に歩み寄った。

しかし、郵便受けには苗字だけで、家族の名前までは書かれていない。


「ちょっと、ごめんなさいよ・・・」

近所の住民らしき老婆が、狭い歩道の真ん中に立っていた私に声を掛けた。

「あ、すいません」

私は歩道の端に避けながら、ふと思い付いた。

この老婆なら、高山医院の事について色々と知っているに違いない。