横からスッと伸びた手が、その本を取った。


あの人……

『あ、ごめん!キミもこの本、取ろうとしてたんだよね?』

私はうつむいたまま、あの人が譲ろうとする本をおしかえす。

『あ、いい、いいんです!どうぞ!』

『ごめん…ありがとう。この本に出てくる森って、あの窓から見える風景と似ててさ。オレ、時々読みたくなんたよね。』

(え!?私と同じだ!)

なんてステキな偶然。これは、神様がくれたチャンスだ。

キモチを伝えるなら今しかない。

神様、私にありったけの勇気をください。
私は去っていくあの人をおいかけた。