視界がひらけたような気がした。―――視点をかえるとこうみえるのか。
「まあ柊さんにも問題はあるんやろうけどな」
さいごにちゃんとあたしを落とすのも忘れない。
ただあたしの味方をするだけじゃなく、あたしの悪いところはしっかり釘をさしてくれるこの人にやたらに惹かれてる自分を微妙に自覚した。
「柊さん?」
「ん?」
のぞきこむようにいわれてぼうっとしていた意識をひきもどす。
「一曲くらいはうたわへん?せっかくカラオケきてんやからなんにもうたわへんのはもったいないやん」
ニカッと笑った柏原くんの笑顔に胸が痛いように締まった。
ゆわれるがままに選曲しながらふと思いついて柏原くんにニヤッと笑いかける。
「柏原くんはうたわないのー?」
「俺?!俺はうたわんでええよ、柊さんがうたいぃな」
「柏原くんが歌ったら歌おうかなー」
あからさまに遊んでみたら、
「‥しゃあないな、一曲だけやぞ?」
緩めて笑ってあたしの髪をなでてからマイクをとった。
「‥あたしの方が年下みたいじやん」
ほぼまわりの誰にもきこえないくらいの音量で呟きながら、熱くなった頬をさますように手をうらがえしてあてる。
それをふりきるように
「みんなー、柏原くんが歌うってー!」
声をはって叫ぶと、女の子がきゃあっとまた色めきだった。
「‥柊さん、ハードルあげんなよう」
ふてたようにゆってちょっと笑う。
「柏原くんなら余裕でこえられるかなって」
にっこりほほえんで軽くうけながす。


