拓斗と話していた時のあの幸せそうな佐奈子さんの顔。
わたしのせいで、また――
佐奈子さんの幸せが、無くなっちゃうの?
やっぱり帰ってこなければ良かった。
叔母さん達の大事な話も申し訳ないけれど電話でって、済ましてもらえば良かった。
ここに、帰ってきちゃダメだったんだ。
……だけど、今拓斗が言ってくれた言葉に少し嬉しいと感じてしまった自分がいる。
駄目だ、わたし。
触れ合ってしまったから、また想いが表に出てきてしまいそうになる。
3年前からの決意が、あっけなく崩れてしまいそうになる。
「俺は別に佐奈子が好きで付き合ってたんじゃないから」
ズレて皺だらけのシーツに視線を落としながら話す拓斗。
同じベットの上で、わたし達は何を話してるんだろう。
「それでも佐奈子さんはとても幸せそうな顔をしてたよ」
どんな理由で付き合ったのかは知らないけれど。
とても。



