「……あ、ここで良いよ」
佐奈子さんの言葉と共に、車は歩道へと寄せられる。
「ありがと。じゃあ、また連絡するね」
「あぁ」
「時雨さんも」
ニコッと微笑まれ、
わたしは運転席と助手席の間から顔を出して佐奈子さんを見る。
笑っていて文句の一つも言わないけれど、
佐奈子さんからしたら良い気分な訳がない。
「すみません、せっかくの2人きりを邪魔するような事になっちゃって……」
送って行くと言ったってこの後わたしと拓斗は2人きりになってしまう。
「いいえ、わたしと拓斗はいつでも会えるので。
久しぶりにゆっくり2人で話して下さい」
「……」
「じゃあ」
クルっと背を向けて歩いていく佐奈子さん。
その背中を見送っていると、窓が閉まり車は再び車道へと戻り走行する。



