「いい、よ」

乗りたく、ない。


断っているのに、拓斗はわたしの答えを無視して後ろを振り向く。


「良いから。佐奈子、帰るぞ」


「う、ん」

佐奈子さんも複雑な表情でわたしを見てる。


「分かったっ、乗せて貰うから離してっ!」

ふ、と離れた腕。


そのままわたしは佐奈子さんの後ろへと周り佐奈子さんに拓斗の隣を譲る。


……佐奈子さんの気持ちも少しは考えなよ。

前を歩く拓斗の背中に、声を出さずに文句を言った。





霊園の駐車場に停められていた黒の普通車。


「乗って」

その声に後部座席へと乗り込めば、車内もクールマリンの香りがした。


「――佐奈子を先に送ってくから」