きっと、墓参りが終われば拓斗からの質問攻めが来ると思う。
これまでのことについての。
どこで、何をしていたのかって。
―――佐奈子さんが一緒にお参りに来てくれて良かった。
抱き締められた感覚が背中に残っていて自分で腕を握る。
早くここを立ち去らなければ。
逃げるようで申し訳ないけれど、
未だに拝み続ける2人を見ながら、そっと階段の方へと歩みを進める。
と、
「時雨!」
……とんだ早業。
腕に強い力が加わる。
―――止めてほしい。
彼女である佐奈子さんが見ているのに。
どうしてこうも彼女の目の前で他の女に簡単に触れる事が出来るの。
そう思いながらも、笑顔を作ったまま、振り向く。
「な、に?」
「家に帰るんだろ?送ってく」
車で来たから…と言う拓斗に首を振る。



