「あぁ……まぁな」
戸惑ったように視線を揺らしながら答えた拓斗。
「スーツで畏まって来なくてももっとラフな格好で来てくれて良かったのに」
「それは時雨もだろ?」
拓斗は自分のスーツを一瞥してから、わたしを見る。
「わたしは初めてここに来たから。大学生姿お披露目しとかないとって思って、ね」
高校生の姿はお父さんとお母さんは知ってるけど、
大学生のわたしは知らない。
だから、見せようと思って。
「大学にはちゃんと行ってたんだな……それにここに来るのも初めてって」
力なく笑った拓斗。
「お二人は毎年来てくれてたの?」
わたしは黙って聞いている女性へと話し掛ける。
「あ……いえ。私は今回が初めてで。でも、拓斗は毎年行ってました」
―――毎、年。
「来てくれてありがとうございます」
知らないわたしの親のお墓参りに来てくれて。
「いえ……」



