聞き慣れない女性の声が聞こえて、

わたしは咄嗟に拓斗を押して距離を取った。


拓斗は目を見張っていたけれど、腕はまだわたしの腕を握ったまま。

わたしを真っ直ぐ見てくる拓斗の視線が痛くてわたしはそれから反らし


ゆっくりと近付いてくる女性を見る。

「……こんにちは」


気まずそうにわたし達の所まで来て立ち止まった女性。

この微妙な空気をどうにかしようと拓斗の腕を振り払うように挨拶した。


「こんにちは」

ニコっと笑う女性はショートボブの髪を毛先だけ内側に巻いていてふんわりとして可愛い。

咄嗟に、彼女が拓斗の“何”なのか分かった。



「時雨……」


「わざわざ命日にお墓参りに来てくれたの?」



まだ、急に会ってしまった動揺があるけれど、それを隠して平然を装って拓斗に話し掛ける。