「……ねぇ、……もし地元に戻ったら、わたしは何処に住んだら良いの?」


拓斗の、一人暮らしの家?


どのくらい、時間が過ぎただろう。

穏やかな時間が流れる胸の中で、


浮かんだ疑問を聞く。

わたしが質問してみれば、首を傾げた拓斗。


少し視線を彷徨わせて、わたしを見ると、にっこり笑う。


「ん……時雨ん家」


「え、」


「時雨の家で、昔と変わらず俺と二人で住むの」


真上から当たり前の事のように言ってくる拓斗。

でも……。


マンションは、

「え、でも待ってっ!マンションは売って……叔父さん達引っ越しちゃったから……」

先週、新しい住所を教えて貰ったばっかり……。


遊びにおいでよって一言ハガキに書いてあって。



全部任せっきりになってしまったけど、


確かに引っ越しする時に売ったはず。


「マンション、俺達が住むから残して下さいってお願いしに行ったんだ。


その時にプロポーズする事も報告したから叔父さん達公認」


……びっくり。


「……なんか強引すぎる」


叔父さん達にまで。

「そうしないと、時雨は受けてくれないだろ」


本当。


駄目だったらどうするの、って位いろいろと動いてくれて。


マンションを、お父さん達との思い出が沢山詰まった場所を残してくれて。

いつもいつも、拓斗から優しさを貰ってばっかり。