さらには早くとせかされる。

訳が分からないまま固まった足を動かしてドアを開ける。



「お邪魔します」

「……」


拓斗を中に入れながらもどうすれば良いのか分からない自分に泣きそうになる。


「扇風機、つけていい?」







「……うん」


狭い部屋の中。


ワンルームの古いアパート。

贅沢なんて出来ないから部屋にクーラーは無い。



扇風機も、普段は控えてるんだけど……。


顔にうっすらと汗をかいている拓斗は扇風機の前を陣取って座る。








「―――はい、お茶しかないけど……」


「ありがと」




冷蔵庫のお茶をコップに移し替えて渡せば、



受け取って飲み干す拓斗。


ごくごくと減っていくお茶を見ながら、



頭の中はずっと同じ疑問が渦巻いている。

……どうして、ここに?


と思いながらも聞けず、

取り敢えず少し離れた場所に座る。



何も言わずに扇風機の風を浴び続ける拓斗を見つめて数分。


涼めたのか、


ふいにくるっとこちらへ反転して向かい合ったわたし達。





「就職……まだ決まって無いんだって?」


かけられた言葉は、今一番わたしが焦って、



そして気にしていること。