ハッと顔を上げる。 ……何で……? 知らないはず、なのに。 「拓斗……?」 「うん」 どうしてここにいるの……? 意味が分からない。 誰が教えたの? 何で、いるの……! 頭の中はパニック状態。 立ち尽くすわたしに拓斗は余裕な表情で笑う。 「……暑い。入れて?」 暑いって。 何も言えない。 わたし、疲れすぎてとうとう拓斗の幻覚まで? 「時雨、早く」 「あ、……うん」 瞬きを数回しても、変わらない。