無言も、肯定となるのに。
時雨さんは、“特別”。
「きっと……婚約も破棄するつもりでしょうね」
あの時は絶対に時雨さんは絶対に帰ってこないと思っていたから婚約をする為にあんな事を言い切ってしまったけれど。
近付いてみたら。
傍に置いてもらえるようになって何年も経ってもう、当たり前になりつつあって。
欲が出てきてしまう。
……離れたくない。
「待って下さい。破棄なんて……拓斗はしないと思います」
顔を上げれば、時雨さんは私の顔を伺うような、でも自分の意見に揺るぎないような表情。
「私は、一時的にこっちに帰ってきただけで……明日にはもうここから出ていきますから。
それに、もうここに戻ってくるつもりは、無いです」
明日、帰る?
もう戻ってくるつもり、無い?
もっと時雨さんが嫌な女だったら、もっと強く言えるのに。
「拓斗を私から取らないで!」って。
なのに時雨さんは、あんなに拓斗に想われている事に気付いてないのか自分と拓斗が結ばれる事を考えて無いみたい。
罪悪感が、生まれる。



