時雨さんは拓斗君の彼女じゃなかった。
その事が、唯一時雨さんに勝った部分だと一人で考えて優越感と言う感情に浸る。
「……だけどさ」
拓斗君の腕の中に治まったまま、肩口に顔を押しつけて幸せに浸っていると
私の後頭部を撫でながら拓斗君が話しだす。
頭を撫でられる心地よさを感じながら、声を出さずに頷いた。
「俺、まだ諦めてないから。時雨を探すのは止めないから」
いつになったら諦めてくれるのか分からない。
きっと、何年経っても拓斗君は諦めてくれない。
ずっと、諦めない。
でも、それでも構わないからと言ったのは私。
「うん。それでも良いから……」
涙声で、籠もった声で伝えれば、拓斗君は「ごめんな」と言いながらギュッとさっきよりも強く抱き締めてくれた。
心地よい温かさ、拓斗君の匂い。
彼女になれた、と言う喜びで私は幸せいっぱいだった。
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「来年、卒業かー……」
半ば無理やり付き合って貰って早2年が過ぎもうすぐ3年経つ。
それでも最初の頃のメンバーで集まって一緒に食事を取ったり、出かけたりしているのはかわり無かった。
拓斗君は、あの時言った通り時雨さんをちょくちょく探してるらしく、
たまにそんな行動を見かけた。



