「……忘れちゃいなよ、どんな理由であっても去っていった人の事なんて」
静かな室内に次々と止まる事を知らない私の心の内は飛び出していく。
忘れてよ、時雨さんの事。
そして、出来れば。
「時雨さんの事、忘れて、私を好きになって……拓斗君が好きなの……」
言い終わった後、グッと自分の手に力が入った。
……沈黙。
聞こえてた、よね。
今の告白を無かった事にされてしまうのでは、と不安に思った時。
トン、と拓斗君の両手が私の肩を押し返した。
離れる、距離。
「……ごめん」
少し離れた距離のまま、茫然と拓斗君を見ていれば、ゆっくりと顔を上げた拓斗君は真っ直ぐに私を見た。



