“時雨”
初めて聞いた幼なじみさんの名前、そして女の人を呼び捨てにしている拓斗君。
私は胸が痛んだのが分かって
もっと、さっきよりも手に力を入れる。
どうして?
どうして苦しんでるなんて分かるの?
そう思うの?
拓斗君の前から黙って消えてしまったのに。
拓斗君がずっと傍にいてくれたのに、何も言わずに突然。
そんなのってあるの?
「でも、拓斗君の前から黙って居なくなっちゃったんでしょ?」
あまりに自分も苦しそうに幼なじみさんの事を思いながら言う拓斗君が健気で。
それと同時に幼なじみさんが憎たらしくなって。
思わず口から出てしまった。
「どうせ、このまま俺に支えて貰って良いのか、とか時雨なりに考えたんだろうな。
アイツは無駄に人の事を気にするから。
時雨のお父さんとした約束の事もかなり気にしてたし。
一人で生きていかないと、って黙って消えて……」



