踏み込んで欲しくないと思っていることなら尚更。
……帰れ、と言われるかな。
踏み込んではいけない、拓斗君の中に僅かに踏み込んでしまった。
周りを取り巻く空気も、悪い。
それでも、帰れ、と言われても帰るつもりはまだ無いけれど。
グッと自分の手のひらを強く握る。
「……笑えるわけないだろ」
帰れ、と冷たく突き放されるかと思ったのに。
怒られるかと思ったのに。
だけど、拓斗君から吐き出された言葉は、一つ前に私が発言した内容の返答だった。
―――静かな室内。
何で、とはもう言わなかった。
「……時雨は、絶対に今笑顔なんか出してない。苦しんでる。なのに、俺だけヘラヘラ笑ってるなんてできるわけ無いだろ」



