「と、言うか似せてるんですけどね高校の時の時雨さんに」


そう言いながらショートボブの髪に指を通す佐奈子さん。


高校の時のわたし……?

あ……そう言えば。

高校の頃、わたしもショートボブにして、


今の佐奈子さんと同じような髪型だったっけ。


あれから切ってもそこまで短くはしていないから


今はロングだけど。


「だけど、今度は伸ばさなきゃ。時雨さんも、いつまでも短くなくてロングになっちゃいますよね」


わたしの髪を見つめて言う佐奈子さんに、少しの恐怖を覚えた。

「どうして、わたしの髪型に似せようと、するんですか?」


伸ばしても、今のように短い髪型でも佐奈子さんは似合う。


だけど、わざわざわたしと同じように、似せようとする意図が分からない。


わたしと同じような髪型にして何の得があるのだろうか。


人の髪型を見て、あ、いいなと思ったり、


そういう髪型にしてみたいと思う気持ちは分かる。


でも、佐奈子さんはそういう雰囲気ではない。


わたしと同じような髪型に“しなくてはならない”


そう聞こえる。



「……そうしないと、拓斗が私を見てくれないから」


「……え?」


ポツリ、と頷きながら零れた佐奈子さんの言葉に


わたしは固まってしまった。



「時雨さんに似せないと、拓斗は私なんて見向きもしない!」



強い口調。


真っ直ぐにわたしを見ながら言った言葉。