「そんな花音に……棗は渡したくないっ!!」



一気にざわつく教室



なに……?花音に棗は渡したくない?



……そっか



そうだったんだ……


美羽が好きな人は棗で……



棗が思っている人もきっと……



あたしは泣いているのを隠すように、教室から飛び出していた



「花音っ!!」



誰かがそう呼んだ気がしたけど、それさえ無視して走り続けた




行く場所なんて決まってない


でもこんな顔、誰にも見られたくなくて、ひたすら走り続けた



息が詰まる



喉が痛く苦しい……




走って走って……行き着いた先は屋上だった



授業が始まったせいか、誰もいない……



…………よかった…



ここなら泣けるよね……?