『……あっれ、有架兄ちゃん。どうしたの』
『永瑠に用があって』
『あー……姉ちゃん?』
『居ない?』
『いやー居るんだけどー……』
ドアノブを掴んで支えた状態のまま、英璃は苦笑しながら視線を廊下の奥へと泳がせる。
どうしたんだろうかと片眉を持ち上げる俺に、すーっと視線を戻した英璃は、やはり苦笑を浮かべており。
『……会話になるかどうか』
『は?』
『なんかね、姉ちゃん昨日ちょっとなんかあったらしくてさ……』
『なに、喧嘩?』
『や、違くて……』
何かを言おうとした英璃だったけど、それ以上は何も言わずに、ドアを全部開けた。
『まあいいや。たぶん有架兄ちゃんに会ったら生き返ると思う。うん』
『死んでんのかよ』
『似たようなものかなー』
肩を竦めて廊下を歩いていく英璃の後から足を進め、リビングへと向かう。
死んだような永瑠って……一体何があったんだ。
っつーか、永瑠が死んだように元気ないっていうのがまず想像できないんデスけど。
日頃から常に不機嫌極まりなくそして結構な言葉づかいで喋っているアイツだし。
想像しろという方が無理だ。
……が、それはリビングのドアを開ければ、すぐそこに存在していた。


