隣を歩く永瑠が悶々とした様子だということは顔を見なくてもわかる。

さっきからあまり話しかけてこないし、話しかけてみても上の空というか意味なくキョドっている。

理由は聞かなくても知っている。

悟ったとかではなく、永瑠宅に行ったとき、英璃が暴露っただけなんだけど。

“意外だな”とは思うものの、なんとなく“やっぱりか”とも思ったりする。


……どうやら永瑠、昨日の夏祭りの時、例の丘崎くんとやらに、告白されてしまったらしい。




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『ちょっと私、有架ママと親睦深めてくるね!』


“キリッ”という効果音がピッタリすぎる敬礼をして、しっかりと身支度を終えた状態の七瀬が、ご機嫌すぎる声色で母さんと出て行ったのが本日朝の10時。

なんかもうすっかり友達感覚なんじゃないのってくらい仲良くなってる2人だけど、更に親睦を深めたいらしい。

ありがたいのは、ありがたいんだけど。

ちょっと待て。

……俺どうすりゃいいの。

暇すぎるだろっていうか暇という名の時間以外何ひとつない気がする。

二度寝してやろうかとベッドに寝転び、そこでふと思い出したのが、永瑠の眼鏡。

……そういえば、買いに行くって約束ともいえない約束のようなものをしていたような。


というわけで、お隣のインターホンを押した。

出てきたのは、お前完璧寝起きだろって感じの英璃で。