人ごみの中に手を振っているニーナの肩を恐る恐るという風に叩き、永瑠はあわあわと。
「い、今……?今から?」
「え?」
「今から、遊ぶの……?」
「うん、そうだよ!」
楽しそうに笑ったニーナとは正反対に、永瑠の表情は一気にこわばる。
「うそ!えぇ、ま、待ってよムリ!」
「え、なんで?」
「こころのじゅんびがががっ」
もはや言葉の漢字変換すらままならない状態のようで。
そんなに緊張するものだろうかとは思うものの、まあしかたないかとも思ったりする。
ニーナは「大丈夫だよ~」と笑う。
その笑顔はほんわかしていて、キャンプの時に一緒にいたあの2人とは確実に合わない子だな、となんとなく思った。
そしてどうしても自分じゃ上手く踏み出せない永瑠を、引っ張り出してくれるのもこの子じゃねェかな、とも。
「あ、ほら、来た来た!」
「えぇえっ」
身を引く永瑠に対し、ニーナは人ごみの中からこちらにやってきたクラスメイトの丘崎くんとかいうヤツ等へと歩み寄る。
丘崎っていうのは、たぶんあの一番手前にいる爽やか系男子、じゃないかな。


