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「……お前さ、文系?理系?」
「…………」
「明らか文系だろ」
「…………」
「なんでこの“x”がここに来るのか俺ですら意味不明」
「うっせェ!オレだってわかんねェよ!計算したらこうなったんだよ悪ィか!」
「逆ギレかよ。近所迷惑だから落ち着け」
サイダーを飲みつつ、永瑠に数学を教えているわけなんだけど。
……なんつーか、根本的に考え方が違うっつーかなんつーか。
理解ができてる側からすれば、なにゆえこの式がこうなるのかが不思議なわけで。
ま、そこを教えるのが理解できてる側の仕事って言えばそう、だけど、しかし。
「あーもうホント数学とかこの世から消えろ」
……とか嘆いてる時点でコイツダメだ。
俺は永瑠に借りたペンを指で回しながら、「あのさ」と。
「あのさ、永瑠。お前、数学やる前から“自分にはムリ”とか思ってんだろ」
「だってムリだから」
「そんなだから解けるモンも解けねェの。俺の説明聞いてる?」
「…………」
「……そっか。じゃ、そろそろサイダーもなくなることだし、俺は帰る」
「は!?ちょ、まっ……!聞くっ聞くから待て!帰るな!ちょっと考え事してただけだし!」
椅子から立ち上がった俺を慌てて止める永瑠、超必死。


