「……七瀬、コイツ女子だから」
「え、うそ、女の子!?」
「正真正銘の女子。俺のお隣さん」
その言葉で、いつかの電話での会話を思い出したらしい七瀬は、「あー!」と手を打ってうなずいた。
「そっか、この子だったんだ!でも、あ、あれだね……なまじ美形でこの格好だと中性的に見えちゃうね……」
それは褒めているのかけなしているのか。
たしかに、永瑠は今日も今日とてまるで男子のような恰好をしているため、パッと見、男女どっちかわからないのはうなずける。
七瀬は何かを考えるような顔をして、ずっと不自然な感じの笑みを浮かべている永瑠をじーっと見つめ、ふと。
「……胸触ったら、納得できるかしら?」
「えっ!?」
「真面目な顔してなんてこと口走ってんの」
ここでようやく永瑠は笑顔を消して目を見開き、反射的に後ずさる。
それくらいのセリフを口にした七瀬はマジでズレてると思う。
一般人の思考の斜め上を行く七瀬は、「あはっ」と楽しそうに笑いながら、手刀を切る。
「冗談だよー。私、変人だけど変態じゃないもん」
自分は変人だと理解していながらそれでも斜め上を行く七瀬は、どうやら救いようがないらしい。


