「ってことだから、リンゴ飴どこ?」
全世界の女性陣を敵に回しそうな七瀬はそんなことまったく気にする風もなく、顔中に“リンゴ飴食べたい”と書きまくって俺を見上げる。
俺はしかたなく辺りを見渡し、
「あー……あれじゃね?」
少し向こうの方にある屋台を指さす。
赤くて丸いものが見えるから、たぶんあれだ。
リンゴ飴ってあんま美味いイメージがないんだけど、七瀬はどうしても食べたいらしく、俺の手を引っ張る。
「ほらほらー、行くよ!リンゴ飴が私を呼んでるの!」
「はいはい」
若干呆れ笑いを浮かべつつ、七瀬に引っ張られるようにして屋台へと向かう。
が、間違いなくリンゴ飴の屋台だとわかる位置、数メートル離れたところで足を止める。
見慣れた姿がある。
見慣れてなきゃおかしいってほど見慣れたちっこい姿がそこにある。
その華奢な肩が、何かに気が付いたように、こちらを振り向いた。
目が合う。
「……ゲッ有架」
こちらを振り向いたのは言うまでもなく永瑠で、俺を見つけると眉根を寄せた。
“ゲッ”ってなんだ、“ゲッ”って。


