「え、え、なんで押すのー」
「ほかに人が居ると言いにくいから」
「なにを?」
「“浴衣姿可愛いからいいじゃん”って」
せめてこれくらい言いたいと思った、んだけど。
……やっぱダメだ死にそう。
たぶんリビングに入っていった母さんには聞こえてないと思うけど、でもあまりにも照れ臭いので、下を向いて靴を履くことに専念する。
すると七瀬は、しゃがみこんで俺の顔を覗き込んできた。
この野郎。
「有架、照れてるの?」
「聞くなよ」
「ダメだよ照れちゃー」
「あはは」と笑った七瀬は、直後に、頬を赤くした。
その頬を指で掻きながら、困ったように笑いながら目を逸らして呟く。
「わ、私の方がたぶん照れてるから……」
……ヤバイ。
普段七瀬はかなりズレた思考してるけど、でも時々、こういうところがあるからヤバい。
たぶん無意識だから、逆に厄介。
……俺が男だって忘れてんのかなー。
とか、ね。


