「……似合ってる」
と言うしか他ない。
や、本音を言うと、ホント綺麗で。
七瀬はなんでも着こなすタイプだから、まず似合わないなんてことないんだろうと思う。
が、浴衣姿を見たのは初めてなので、なんつーか、ちょっと見惚れてしまった。
……とか、口が裂けても言えないんだけど。
なんていう俺の心中は露知らずな七瀬は、「えへへ」とかにっこり笑って更に可愛さ倍増ってヤツ。
「よかったー!浴衣着るの初めてだから……あ、しまった。浴衣着たら自由に動き回れないじゃない!」
……そこか。
「なんかほら、浴衣の袖の部分とかさ、金魚すくいに絶対不利だと思うんだよね!」
「あー、うん、そうだね」
「ちょっと有架!なにその返事!私にとってはかーなーり重要なんだから!」
人差し指を立てて、“かーなーり”と一緒にその指を振る七瀬さん。
そんなに重要デスか。
俺に浴衣姿見せるより?
……なんて死んでも言わないけどね。
内心でそんなことを思いながら、ソファから立ち上がり七瀬のもとへ向かう。
その背中を押し、玄関の方へと押す。


