俺は溜息をつきながら、頬を膨らませた状態のもはや幼稚園児かと言いたくなるような七瀬に言う。
「祭りに行きたかったんじゃねェの?」
「ハッ!そうだった!お祭り!まだ始まってないよね!?」
なんだろうこの敗北感。
「屋台とか出る!?たこ焼き出る!?浴衣とか持ってきちゃったんだけど着た方が良いかな!?ね、有架どう思う!?」
「……なんつーか、うん。好きにしたらいいと思う」
「わかった!じゃあ浴衣着る!あ、有架のお母さん浴衣着せて下さるかな!?図々しいけどお願いしてもいいかな!?」
「あーまあ聞いてみたらいいと思……」
「有架のお母さーん!すみません、図々しくも浴衣着せて欲しいんですけど、いいですか!?」
「まあ!もちろんいいわよ!私女の子居ないからそういうの夢だったの!」
「ホントですか!じゃあお願いします!有架、部屋借りるね!」
ニッコリ笑顔の七瀬に、返事をする前に追い出される始末。
……あれ、ここ誰の部屋だっけ。
リビングでそんなことを考えつつ、自室から聞こえてくる楽しそうな会話を聞き流す。
女子とかが集まると、男子とはまた違った騒がしさがあると思う。
ってか、男子より女子の方が騒がしい気がしてならない。
近所迷惑にならないだろうかと不安になり始めたころ、ようやく部屋のドアが開いた。
「お待たせ!有架、どう?浴衣!」
部屋から出てきた七瀬は、淡い黄色に花が散りばめられた浴衣に、長い栗色の髪の毛をアップにした姿をしていて。
……どうか、なんて、聞かれても。


