*****
「やーだーまだ寝るのー!」
「余裕で5時間以上は寝てるっつーの」
「じゃああと5分!」
「却下」
「ならば10分!」
「増えてんじゃねーか!」
とかなんとか騒ぎつつ、布団にしがみつく七瀬を引っ張り起こした俺って母親か。
なるほど、なかなか起きない小学生の子供を持つ母親の気持ちがよくわかった。
大変だ。
これはホントに大変だ。
ベッドの上で胡坐をかいてムスッとしている七瀬が小学生に見えてきた。
「あとちょっとで美味しいたこ焼きが食べられたのにー。有架のばかー」
「お前いくつ?」
「七瀬さん?ピッチピチの20歳だよ?」
「だったらそろそろ自分で起きれるようになれ」
「うわー有架のいじわるー!ケチー!アホー!おたんこなすー!」
“おたんこなす”ってリアルに言うヤツ初めて見た。
ってか今どきそれを使うヤツが居るとも思わなかった。
……もうホント七瀬がマジで小学生にしか見えなくなってきたんデスけど。
っていうか、5時間。
こっちが5時間以上も落ち着かなかったことわかってほしい。
七瀬がすぐ傍にいるっていうのはすごいうれしいんだけど、状況が状況だったことをもっとわかってほしかったりする。


