「……七瀬さん、あなたは一体何をしているのでしょうか」
「うん?有架さんのベッドでひと眠りさせていただこうとしているところだよ?」
無防備にも程がある感じで彼氏のベッドにダイブすることができるんだと思う。
袮夏もそうだけど、なんで俺の周りにはこうやって勝手に人のベッドに寝転がる輩が多いんだろうか。
ホント厄介。
ましてやそれが彼女とか。
笑えない。
ここで笑えって方が無理だと思うんだけど。
なんてこっちが考えていることは露知らずなんだろう七瀬は。
「もうね、今日ね、七瀬さんは早起きしたわけですよ。早くお祭りに行きたいから早起きしたわけですよ。あ、もちろん有架にも会いたかったしね?うん」
最後の取ってつけた感。
別にいいけど。
「電車の中は結構混んでるし、眠いし足踏まれるし荷物重いしで、もうね、くたくたなわけですよ。ってことで、七瀬さんちょっと眠らせていただきますけどよろしいでしょうか?」
「別によろしいですが」
「ありがとー。あ、私が寝てる間に手は出さないでねー」
いや、わかってるけど。
わかってるんだけど。
……やっぱちょっと、ひでェ。
手をひらひらさせて右を下にしてから縮こまったかと思うと、七瀬はおやすみ3秒の勢いで健やかな寝息を響かせ始める。
寝つきはいいけど寝起きが悪い七瀬をどう起こそうかとふと考えて、ちょっと憂鬱になった。
言わないけど。
……あーもうホント笑えない。


