けれど、荷物を持ったまま店を見て回るのもどうかと思うので、俺は手に持った七瀬の荷物を持ち上げて見せ、
「わかった、あとで一緒に行く。とりあえず、これ置いてからな」
「あ、そうだね!私もちょっと休みたいしー」
あっさり引き下がるのも七瀬の性格だ。
しつこくなく、ホントさっぱりした性格。
足取り軽く隣を歩く七瀬の手を引きながら、家までの道を歩く。
炎天下だろうがなんだろうが、ちょっと幸せな時間だ。
*****
家に着くと、母さんがどこぞの犬かと言いたくなる勢いで飛び出してきた。
ありえないくらいの笑顔だ。
「待ってたわよー!いらっしゃい!さあ上がって!」
「すみません、突然……。あ、これ、ホント安物なんですけど、よかったら食べて下さい」
「あら、そんなに気を使わなくてもよかったのに!でも、ありがたく頂くわね~」
「少しの間よろしくお願いします」
「こちらこそ~!」
頭を下げる七瀬に、母さんはかなり嬉しそうに頭を下げ返している。
その様子を七瀬の隣から見つつ、俺は内心で安堵の息を吐く。
こういう時ってどう対応したらいいかとかちょっと不安だったんだけど、そういえばこの2人は結構似てるかもしれないから、案外大丈夫っぽい。
さて七瀬の荷物をどこに置こうか、と考えて、ふと立ち止まる。
……七瀬は一体どこで寝るつもりなんだろうか。