ロリーポップが不機嫌なワケ。





仲良さげな家族写真。

人数は今より1人多い頃のもの。

幸せそうなその写真が、棚に所狭しと並べられていた。

“その写真”と言ったのは別に比喩でもなんでもなく、まさに“その写真”という文字通りの光景だったからで。

……間違え探し?


「なあ、永瑠。実瑠(みのる)の写真、他になかったのかよ」


俺は皿を食器棚に直しながら、皿洗いをしている永瑠にそう尋ねる。

永瑠は一度洗う手を止めて、けれど目線は手元の更に焦点を合わせたまま、


「……知らねェ」


それだけ答えて、洗い物を再開した。

永瑠っぽくねェな。と思って眉をひそめる俺に、英璃が皿を持ったまま近づき。


「有架兄ちゃんはアレだよね。鈍いよね」

「はあ?」

「鈍感だねって言われない?」

「どうだっけ」

「じゃあ僕が言ってあげるよ。鈍感だね」

「黙れ」


皿を片付け終え、リビングに置かれたソファに腰掛ける俺。

キッチンから出てきた永瑠が、「ゲッ」と言いたそうな表情を浮かべる。