ロリーポップが不機嫌なワケ。





ウザがられることはあっても、怖がられることはなかったヤツなので、どう対応していいかわからないらしい。

PSPを落としたままフリーズ状態の袮夏は、たぶんいずれ復活すると思うのでとりあえず置いておくとして。


「……で、どうした?」


ドア付近に佇んでいる永瑠へと顔を向けてそう問いかけると、永瑠はハッと思い出したように部屋に入ってきた。

それから「あのな!」と。


「さっきニーナちゃんがウチに来て、“ありがとう”って言ってくれた!“永瑠ちゃんカッコいいね”って!“私もがんばる”って!」

「おー、そっか。よかったじゃん」

「うん!よかった!超よかった!」

「ええ話やで……」

「いつの間に復活してんだよお前そして泣くなウザイから」

「永瑠ちゃん、こんなドライアイスより俺の方が絶対あったかいで」

「そうかもですね!」

「せやろ!」

「あーもうマジ頭痛い」


どういうわけか意気投合してしまっている2人にため息を吐きながら、けれど俺は、眼鏡をかけていない永瑠の、しかし今はめちゃくちゃ嬉しそうな姿を横目に映す。

やっぱ不機嫌顔より、そっちの方が似合う。

なんて思ってみる。

言わないけど。

1人バレないように口元を綻ばせた俺は、慌ただしい足音に気づき、顔を上げ……た途端。


「姉ちゃんのばかああっ!!鍋焦げてるってばああああっ!!」


またしても部屋のドアが盛大に開き、半泣き状態の英璃が飛び込んできた。

「嘘!ごめん!!」と立ち上がって部屋を飛び出して行く永瑠の後ろを「鍋ダメにしたの僕知らねェかんなあ!」とか言いつつ英璃が追いかけて行った。

……嵐が去った。

一瞬シーンとした後、袮夏が思い出したかのように尋ねてきた。


「で、有架。ゲームやらへん?」

「なんていうかもうホント帰って」