ロリーポップが不機嫌なワケ。





俺は呆れたように小さく息を吐き、その場に座り込んで、胡坐をかいた膝の上に頬杖をついた。

後ろから、永瑠の微かな嗚咽が聞こえてくる。

なんていうか、永瑠がTシャツの裾に顔を押し付けてるわけだから、俺の背中部分のTシャツは思いっきり捲れ上がってるんだけど、まあいいか。

ちょっといやかなり風当たり良すぎるけど、気にしないことにしよう。

今日は永瑠が頑張ったんだ。

今日は永瑠が主役だよ。

ポケットの中の光るそれを思い浮かべながら、俺は小さく口を開く。


「……今度、眼鏡買いに行くか」


永瑠は何も言わなかったけど、微かに頷いたような気がした。

俺は誰にも気づかれないような微笑を、無意識の内に浮かべていた。

お疲れ永瑠。

気が済むまで、泣いていいよ。




*****




「いやーそれにしても青春やなあ」

「…………」

「永瑠ちゃんカッコええわあ」

「…………」

「あ、もちろんお前もカッコええで!」

「帰れエセ関西人」

「デジャブ!?」


大袈裟なリアクションをしてみせるのは、デジャブもデジャブな袮夏の野郎で。

昨夜、帰宅した俺に母さんがニコニコと『お友達来てるわよ』とか言ってきたので、まさかと思いつつ部屋に行くと案の定袮夏が人様のベッドの上でごろごろと漫画を読んでいた。