永瑠は一瞬ピクリと肩を上下させたけれど、何も言わずに少しだけ縮こまった。
俺はフッと笑い、
「あんまり縮こまると、どこに居るかわかんなくなりマスよ」
「……るっさい」
軽口を叩いてみせると、永瑠はちょっと鼻声で言い返してきた。
俺は少し安心して、頭を撫でながら「あのさ」と。
「あのさ、そんなに落ち込まなくてもいいと思う」
「…………」
「だって、永瑠は悪いことしてないだろ」
「……でも、酷いこと言った」
「それはお互い様」
「……でも、ああいう時だけいい子ぶった」
「いい子ぶれるチャンスを掴んで何が悪い。悪い子ぶるよりいいっての」
「屁理屈だろ、それ」
「こういう時の屁理屈はありがたく頂いとけ」
「…でも、」
「“でもでも”言い過ぎ。これから“でも”禁止」
「……うるさい、バカ」
ぐすっと鼻をすすった永瑠に、俺は頭を撫でる手を止めて、永瑠の顔を覗き込むように首を下げる。
「永瑠、顔上げろ」
「……断る」
「3秒以内に上げなかったら放置して帰る」
「おまっ」


