ワザとらしく笑った1人が永瑠の髪の毛を掴む。
ただの口喧嘩ではないことが一目瞭然。
人数的にも体格的にも、永瑠の方が不利なのは明らかで。
永瑠の服が汚れているのは、必然なのかもしれなかった。
髪の毛を掴まれて表情を歪めながらも、しかし永瑠はキッと女子生徒を睨み上げる。
「オレが孤立してようが何してようが、お前等はおかしい」
「は?え?なにそれ、マジでボコられたいの?」
「つか、おかしいって言う方がおかしいんじゃん?」
「じゃあ、おかしくて結構だ。お前等は最低だ」
ヤバイ。
「最低?あははっ……あんたマジ、殺していい?」
「やれるもんならやってみろ」
「ホンットムカつくっ!!」
ヤバイ。
「いっつも1人で居るクセにこういう時だけ良い子ぶってんじゃねェよっ!!」
女子生徒の右手が後ろに引かれる。
平手打ち。
永瑠は目を閉じない。
その手が、勢いよく振り下ろされた。
――パシンッ
酷く乾いた音と共に、痛みが走ったのは、俺の右手だった。


