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「先生!永瑠ちゃんたちが喧嘩を……っ!」
そんな叫び声が響いてきたのは、行事も終盤に差し掛かった頃。
担任が集合をかけたにも関わらずこの場に居ない永瑠、そして昨日の女子生徒3人を心配し始めた時だった。
集合していた場所は建物の中の講堂で、叫びながら飛び込んできたのは、たしか“ニーナ”と呼ばれていた女子生徒。
どうしていいかわからないような、困惑と焦りが入り混じった表情で、泣きながら叫ぶ。
「と、止めて下さい……!永瑠ちゃんが1人で……っ!ど、どうしていいかわからなくて……っ!」
「どこに居る?」
無意識の内に、俺はそのニーナと言う女子生徒に問うていた。
ハッとしたようにこちらを見上げたニーナは、混乱しているのか意味がよく理解できなかったようで、
「えっ……」
「永瑠たちはどこに居る?」
もう一度尋ねると、ニーナは嗚咽を飲み込みながら、必死な面持ちで答える。
「外の……トイレの近くです……っ」
「わかった。ありがと」
「あっわっ私も行きますっ!」
講堂を出ようとした俺に、慌てた様子で涙を拭きながらついてこようとするニーナ。
その表情は真剣で。
……なるほど、そういうことか。


